CLTは、木材を特殊な技術で積層させた、世界各国で急速に普及している新しい建材。
鉄やコンクリートよりも軽く、それでいて同比重での強度はそれらの優に数倍。
住宅はもちろん、高層建築にも用いられています。
近年では東京オリンピック・パラリンピックの選手村にもCLTが採用されています。
災害への高い耐性と、天然素材がもたらす安心感。
木造建築の常識を塗り替えるこの技術によって建築はさらに安全で快適に、進化を遂げました。
四季の表情が豊かな日本では、時として厳しくなるその気候風土から家を守る為の知恵として、深い軒の出が古くから採用されてきました。
軽量さとそれに反した強度を持つCLTは、この深い軒の出をつくるのに適した建材です。ファサードデザインの個性を強められるのはもちろんのこと、外観に印象的な影を落としたり、窓との組み合わせによって開放的な空間をつくったりと、高い自由度での設計ができるのが強みです。
洗練された現代的な建築の中にも、寺社仏閣や街道沿いの民家など、日本の伝統的な住まいの面影を残すことが可能です。
人の心に安らぎを与えてくれる木の風合いや香りは、これまでに様々な建築の内装で積極的に用いられてきました。
現代において、それらは鉄やコンクリートといった構造体の表面だけに後付けで据えられる場合がほとんどですが、CLT建築は木が構造体であり仕上げ材でもあります。木に囲まれて暮らすことの利点を、これほど享受できる建材はありません。天然素材の質感を活かすため、細部の金属パーツにもそれを引き立てるための工夫がなされていて、表情の良さを損ないません。
最大サイズで 12×3m、厚みで 90〜270mm の木の塊から加工成型されるCLTは木の柔らかな質感と重厚感という、二面性が楽しめるのも特長です。
日本は国土の67%、2/3以上を森林が占めています。成長しきった木はCO2の吸収量が減るため、再生可能な範囲で森林資源を使用することは、国土を保全し水を育み、地球温暖化を抑止するなど、現代社会を取り巻く様々な環境問題の解決を後押しします。
CLTはこれまでの工法と比べて4倍以上の国産材を使用するので健全な森林の造成・育成という観点でも社会貢献度の高い建材。その地域ごとの木材を使って成型することも可能で、住居への愛着と思い入れをさらに強めてくれるはず。
この天然木由来の素材を使うことは人の体と心はもちろん、地球にもやさしい選択なのです。
高温多湿の日本で築1000年の木造建築が現存しているように、木は適切に使うことで高い耐久性を発揮してくれる素材です。
これほど技術が発展した今日でも国内では大半の住宅が木造で日本の気候や風土との相性の良さはすでに多くの事例によって実証されています。
また、木材はCO2を固着させるので、CLT建築が長持ちすることはそのまま地球のCO2排出量の削減という面でも大きな意味を持ちます。
長い時間を過ごす住まいだからこそ、"長持ちする" というのは重要な利点です。
調湿性を持ち、室内環境を整えてくれる木は天然の機能素材。
鉄やコンクリートに比べて自然な温もりがあり、湿度や温度を適度に保てるので心地よさを損ないません。
また、世の中に木質材料は数多くありますがJASに規定されているそれらの素材の中でもCLTはもっとも無垢の木に近いとされ、接着剤の使用量が少なく有害なホルムアルデヒドの放出量はゼロ。
人はもちろん、ペットの犬や猫などの体にもやさしい建材として評価されています。
木材の比重は約0.3~0.8とされていて、コンクリートの2.3や鉄の7.8という数字と比較すればわかる通り、極めて軽い素材です。
この軽量さは木材の大きなアドバンテージのひとつですが、一方で比重に対しての強度は鉄やコンクリートの数倍から百数十倍と強さも兼ね備えているのがわかります。
これにより、中規模建築では地盤補強のための負担が軽減でき、大規模建築でも床板や耐力壁などにCLTが採用されるケースが年々増えています。
世界有数の地震大国として知られるここ日本では、幾度かの震災を経験したことで、近年さらにそんな災害への意識が高まっています。
剛性の高いCLTは耐震性に優れた素材としても知られていて、震度6強の地震を想定した実大振動台実験というテストでは他工法では倒壊こそせずとも1階の高さで12cm程度の変形や歪みが生じるなど家屋が使用不可能なレベルまで大破をしたのに対し、CLT建築は同じ条件で3cm程度の変形に止まり、地震後も使用可能という結果が出ています。
大地震の後でも損傷が少ないのは、在来工法との大きな違いのひとつです。
一般的に木は燃えやすいため、木造建築は火災に弱いという先入観を持たれがちですが、実はそうではありません。
木は燃えると表面が炭化し、それが耐火皮膜となるため内側に燃え進むスピードが遅くなり、CLT建築でもそうした燃えしろを構造計算に入れて設計することが可能です。実際の火災では鉄骨の建物が直接炎にさらされて強度が落ち、10分ほどで倒壊に至ったのに対して、CLTを使用した建物では30分が経過しても倒壊せずに保たれていたという記録が残っています。
人命と家屋を火から守る素材としても、CLTは最適です。
夏の暑さと冬の寒さ、両方と向き合わなければいけない日本で住まいの快適さを保つためには断熱性が大きな鍵となってきます。
木の熱伝導率はコンクリートの1/10、鉄の1/350ほどとされていて、木材を使ったCLT建築も当然高い断熱性能を秘めています。
例えば12cmのCLT壁の片側が燃えているときでもその反対側は素手で触れられるくらいと聞けばイメージしやすいでしょう。
建物の構造体部分から熱を逃さず、室内を冬は暖かく、夏は涼しくしてくれます。
建築に使われるCLTはすべて工場で加工されてから現場へと搬入されます。
寸法精度が高いため建て方での歪みの調整などの手間がかからず、現場での作業が大変スムーズです。
その工程の円滑化は規模が大きく複雑になるほど顕著になり、特に大規模建築では他の工法に比べて、大きな建築工期の差が生まれます。
仕上げの不要な天然木というのも、工期短縮の上では大きなポイントです。